私たちはコンゴウ団、ギンガ団、イチョウ商会の3団体からなる捜索隊に助けられた。
いつまでたっても帰ってこないウォロと私を心配してイチョウ商会がコンゴウ団に相談。夜も遅いので捜索は次の日にと話が進んでいたが、長であるセキさんが「こういうのは早い方がいい。時間をかけたらいけねぇよ」と決断。ギンガ団とシンジュ団に掛け合ったそうだ。
ギンガ団からは調査隊の人が、シンジュ団からはガチグマが参加した。
ガチグマが私の私物の匂いを嗅ぎ、ここまで導いてくれたらしい。そういえば、ゲーム中でも迷子やお宝探しで活躍したもんな。川に飛び込んで匂いが消えかけてたけど、見つけてくれるなんてすごいよな~。
道中はギンガ団やイチョウ商会、セキさんたちなんかが野生のポケモンを警戒し、戦闘になりつつも、ここまで来てくれたんだとか。いや、本当にすみませんでした……。
セキさんの即断即決、即実行がなかったら、私とウォロはこの夜を乗り越えられなかったんじゃ……。絶対今頃寒さで凍えてたよ。さすが、時を重んじるコンゴウ団の長。ギンガ団の人とあわせてお礼言っとかんとね……。
私とウォロは、手厚い看病を受けた。お陰で風邪にも他の病気にもなりませんでした! よかった!
――とも言えないんだな~、これが。
「新人」
「はい」
「遭難しかけた経緯は分かった。だが、今回は事が大きくなった。お咎めなしとはいかない」
「はい」
「しばらくは、ウォロ以外の人間を教育係としてつける」
「はい」
「あと、出掛けるときは誰かと連れ立って行くこと。ウォロ以外で」
「はい……」
「確かに自由時間は何をしてもいい。だけど、『節度』という言葉を覚えておくように」
私はギンナンさんから説教を受けていた。ギンナンさんは声を荒らげたり怒鳴ったり感情的に何かを言うことはないが、理性的に淡々と、どこがダメだったかを説いてくるので、結構ダメージが大きい。【しめつける】みたいにじわじわ後からくるのは怖いね。怒らせてはいけない人だよ、ホントに。
「それから」
「うぇ、まだあるんですか」
「あるよ」
ギンナンさんがふぅ、と溜め息をついた。
「ウォロを襲うな」
「襲ってません!」
私はすぐさま否定した。
「襲ってないですよ! 何でですか!」
「好きだからといって早急に事に及ぶのはよくないよ」
「好きじゃないです!! 先パイは先パイですから!! だからー! あれは生きのびるために必要なことだったんですってば!」
確かにね、発見されたときは襲ってるように見えたと思いますよ? ベルト取りましたので。
でも、ホントにホンッッットーーーにウォロに恋愛感情はないんだってば!!
「商会内ではもう公認だよ。新人はウォロが好きだって。付き合えるか賭けまでしてる」
「人の恋路を賭けにするなー! いや、恋なんてしてませんがね! ちなみに賭けはどんな感じで?」
「フラれるに賭けてるのが8割らしい」
「うっわー先輩方酷すぎる!!」
むしろ2割誰だよ。握手したい〜!
8割の人は特定簡単だよな、どうしてやろうか。
「反省してる? 騒ぎ起こしたらダメだよ」
「し、してますよ……」
ギクリ。
私の心読んでるの?
「っていうか、ウォロ先パイはお咎めなしなんですか?」
「……ウォロにも責任はある。売上ノルマを増やした。後は……、7日間は店番。外出の許可は出さない」
「むー。ならいいですけど」
「逆に新人は仕入れに行ってもらうからね? しばらくウォロと顔を合わせられないよ」
「えっ!? ……あ、いや、そっか。2人で一緒だったからああなったんですもんね……」
身から出た錆ってやつだ。しばらくは大人しくしよう。ウォロも遺跡巡りに行くほどの時間は作れなさそうだしね。
「それから」
「えっ、まだあるんですか!」
足が痺れてきた。もうやめてください。正座とぅらい……。
「……無事でよかった」
予想外のそれに、私はぽかんと口を開けた。
ギンナンさんがふっと笑った。
「大事な仲間だから。誰ひとり欠けていいものじゃない。本当に、よかった」
「…………はい」
ちょっと涙声になったのは見逃してください、ギンナンさん。
***
そのあと、私は偶然ウォロに出会った。
「あ、ウォロ先パイ」
「後輩さん、こんにちは」
ウォロがにこりと笑った。
「これから仕入れですか?」
「うっす! 仕入れ担当の方についていくところで」
そういうウォロは、これから店番みたいだ。
「ウォロ先パイ」
「はい?」
「えっと……あ」
呼び止めといてなんだけど、何を言うか考えてなかった。
「どうしました?」
遠くで私を呼ぶ声がする。仕入れ担当の先輩のものだ。早くしないと怒られるかな。
「先パイ。あの、ああいうことになりましたけど、また私と遺跡巡りしてくれますか?」
だってさあ、まだ油断できないから。
ウォロが裂け目を作る可能性はまだあるから。
監視、必要だよ。
「先パイの傍に、いさせてください」
しばらくウォロは、無言で私のことを見つめていた。
沈黙が降りる。
相変わらず、何考えてるか読めない。
しばらく見つめ合う形になったが、
「――ええ。もちろんですよ、後輩さん」
ウォロは、柔らかく微笑んでくれた。
「ただし、今度は川に飛び込むのはナシでお願いしますね」
「いや大丈夫でしょ。オヤブンに襲われるなんてそうそうないですし……」
私は肩をすくめた。
あ、やべ。仕入れ担当の先輩が怒ってる。行かなきゃ。
「もう行きますね。先パイ、また」
「はい、また」
ウォロは背を向け持ち場へ向かう。
手を振って私は駆け出した。
そこから1週間くらい、私はウォロと出会うことはなかった。
結論から言うと、ウォロは時空の裂け目を開いた。
恐らく、私と別行動している間に、ギラティナと出会ったんだと思う。
でも、出会ってすぐには開かなかったんだじゃないかな。
ウォロが計画を実行したのは――多分、あれ。シンジュ団の集落にいた頃。
私が転売ヤーを捕まえようと躍起になった事件が、きっかけだったと思う。
この事件でも私は色々やらかして、間違ったフラグを立てたのかもしれない。
聞きたい?
……うん。思い出すからちょっと待っててね。
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夢主の 賢さが 1上がった▼
ウォロの 夢主への好感度が 2上がった▼
ウォロの 夢主への警戒度が 1下がった▼
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