不死鳥のごとく、燃え上がれ⑳
ミアレシティに異変が起きたあと、すぐさまグリは次の行動に移った。
フレア団ヌーヴォの面々に連絡を入れ、炊き出しの準備を進める。
街の各所で、メガシンカしたポケモンが暴走しているという報告が次々に届いていた。
ほどなく、プリズムタワーの暴走を止めるため、キョウヤたちが動いているらしい、という情報も入ってくる。
多くのチームが彼に力を貸しているようだった。
「グリーズ」
「……分かってるよ。出張臨時サービスをしてやろう」
グリーズはにやりと笑って、荷物をまとめ始めた。
グリは変わり果てた街を眺める。
(さんは無事だろうか)
グリの脳裏に一瞬、の顔が過ぎった。
***
キョウヤとの共闘のあと、グリとグリーズは囮になり、メガカイロスを引きつけていた。
プリズムタワーのことは、キョウヤに任せた。自分たちの役目は――この暴走を、少しでも引き受けることだ。
「カエンジシ、【かえんほうしゃ】!」
「リザードン、【フレアドライブ】!」
少しでもタワーへ向かうキョウヤから気を逸らすため、屋上から屋上へ飛び移り、グリたちはメガカイロスを誘導しながら蹴散らしていく。
「埒が明かないな」
「このメガシンカの暴走は、プリズムタワーにあるのでしょう。大元を叩かなければ、おさまらないのでは」
「ったく。早くしてくれよ、キョウヤ。わたしたち、こんなに忙しいのは慣れてないんだ」
グリーズが不敵に笑い、カエンジシに指示を出す。
「もう一度、かえん――おいグリ、あれ」
「グリーズ?」
「囲まれてるの、じゃないのか?」
「――」
グリはグリーズが指し示した方向に身を乗り出す。
「さん!」
メガカイロスに追い詰められたとチルットがいる。
「まずい。さんはトレーナーでは」
「行けっ!!」
グリーズが吠えた。
「ここは引き受けてやるよ。大事な常連だろ!」
「恩に着ます、グリーズ!」
言うなりグリは駆け出した。リザードンが低空でグリに並走し、何かを訴えるように鳴く。
「――はい、きみの翼で連れて行ってください」
グリはリザードンの背に飛び乗った。瞬間、リザードンが屋上から疾風のように疾走する。
(間に合え、間に合え!)
メガカイロスの包囲網は徐々に小さくなっていく。の姿が見えなくなっていく。
――嫌だ!
焦燥の中、ひと際強い焔が燃え上がる。熾火のようだったそれは、灼熱となってグリの身体を焼いた。
グリはメガストーンの指輪を掲げる。刹那、リザードンはメガシンカの光に包まれた。
オレンジの体躯は黒と青へ。完全燃焼の青い炎。
グリはメガリザードンの背から転がるように飛び降り、力の限り叫んだ。
「何もかもを燃やし尽くせリザードン、【フレアドライブ】!」
「……やっぱり私、グリさんが……好きだぁ……」
何十回目かも分からない告白だった。
あの雨の日のことなどなかったように、は変わらず、自分に愛を伝えてくれる。
グリの心の奥ではずっと、熾火のように燃えるものがあった。灰しかないと思っていたけれど、残っていたものは確かにあった。
(この人には、知っていてほしい)
自分の正義も間違いも過去も、全部知っていてほしい。
(拒絶されるかもしれない。……だが、知ってほしい。おれという……灰色の男のことを)
ようやくこの手は、彼女を抱きしめられる。
「知ってます……」
今は、それしか言えなかったけれど。