不死鳥のごとく、燃え上がれ⑲
「リザー、ドン……?」
助けてくれたのはメガリザードンXだと分かった。
チルットがの腕から飛び出し、嬉しそうにメガリザードンへ身体を擦り寄せた。
(チルットがあんなに……ってことはリザードンは……あのカフェの……)
は呆然として、リザードンと、こちらに駆けてくるトレーナーを見上げた。
「……ぐ、りさ……」
ヌーヴォカフェの制服を着たグリが目の前にいる。
「どう……」
「大丈夫ですか!?」
は些か乱暴に肩を掴まれた。
(こんなグリさんも、初めて見た……)
久しぶりに見るグリは、額に汗を浮かべ、目を大きく見開いていた。
「怪我は――してないですね。よかった……」
グリの服は煤や土で汚れており髪も乱れているが、血の色は見えなかった。
(よかった、グリさんも無事なんだ……)
そう言いたかったのに、言葉が喉で引っ掛かって上手く出てこない。グリはいつもの穏やかさを取り戻したようで、低く落ち着いた声でに声をかけた。
「落ち着いて、深呼吸して……そう、上手ですよ」
グリの言う通り呼吸を繰り返して、ようやくの頭ははっきりとしてきた。
(私、グリさんに、助けてもらったんだ……)
ようやく自分の状況が把握できたからだろう。の足から力が抜けて、ふらりと倒れそうになる。
「おっと」
しかし、グリが素早くの肩を抱いて引き寄せたので事なきを得た。代わりにグリの胸元がすぐそこにあり、は小さな悲鳴を上げた。
「わあっ!」
(近い近い近いわ!!)
今日のグリからは、煤と鉄、そして僅かなコーヒーの匂いがした。
これ以上は心臓が保ちそうにない。はグリから離れようとしたが、逆に更に引き寄せられてしまった。
「あのっ! な、なんで――」
グリの腕に抱かれて、は顔を赤くした。喜んでいいのか怒ればいいのか分からなくなり、じわりと涙が浮かび、眦から零れていく。
「なんでえ……」
「すみません。そんなにおれが嫌でしたか」
「ちっ、違います! 嫌いになんてなりません!」
今度はグリが離れようとするので、は彼の服を必死で掴んだ。
「あんなにたくさんのメガカイロスをひとりで相手するなんて危ないですよ!」
「さんは知らないでしょうが、おれは強いんですよ?」
「知りませんっ!! 私はあなたがカフェのマスターってことしか知りませんっ!!」
は思わずグリに抱きついた。傍から見たらしがみついているようだった。グリははっとしたようにから手を離し、両手を宙に上げたまま動きを止めた。
「うう……無茶しないでくださいぃぃ」
「さん……」
グリの手の気配をすぐ側で感じるが、その指先がに触れることはない。
「会えて、嬉しい。本当に……本当に……っ」
は胸がいっぱいになっていた。心の中の風船は大きく膨らんで震えている。
「もうダメだって思ったら、グリさんのことばっかり浮かんでぇ……」
声が震えて、息が詰まる。
伝えたいことが、山程ある。
けれど、今一番に告げたいのは、たったひとつの言葉だった。
「……やっぱり私、グリさんが……好きだぁ……」
「知ってます……」
グリはうっすらと笑みを浮かべ、
「きみが好きだと言ってくれるなら、――おれの灰色だった日々にも意味はある……また、燃えることができるんでしょうね」
観念したように、を抱きしためた。