不死鳥のごとく、燃え上がれ⑮
「グリも会いたいだろ」
「……」
「悪い気はしなかったろ。んー? どうなんだよ」
言葉の端にからかう響きがあった。グリは少し考えてから答えた。
「どう思いますか?」
「はあ……。グリの気持ちなんか、わたしが知るかよ」
どこか投げやりにグリーズが言った。
「……そうですよね」
正直なところ、グリも自分の心がよく分からなくなっていた。
に「好きだ」と言われるたび「どうしておれなんかに」と不思議だった。けれど、彼女の言葉は愚直なほどに青い。
(嘘偽りのない本心なんですね。……おれのことが、心の底から好きだと)
この人は、おれがフレア団だった過去すら丸ごと包んでくれるのではないか……、と。淡い期待があったのは、嘘ではない。
(でも、彼女は本当のおれを知らないから、好きだと言えるんですよ)
どうやらは、初めて出会ったあの日、コーヒーをタダで提供した恩を忘れないでいるらしく、事あるごとに「グリさんは優しい」と褒めていた。
(恵まれない者にコーヒーを。行く宛のない者に居場所を。……フレア団だったおれたちは、その苦しみを知っている)
世間から白い目で見られるのなら……そこから脱却するしかない。
生まれ育ったこの街で、再び受け入れられるために。
を助けたのもそうだ。まわり巡って、名誉回復に繋がるから手助けしただけのこと。それ以上の意味はない。偽善者と非難されたら否定はできない。
ゆらゆらと、風に吹かれるロウソクの火のように揺れながら――それでも、の気持ちに応えてはならない、とやんわりと断ることしかできなかった。
しかし、数日前の――あの雨の日。グリは夢から醒めたような心地で、と、その周囲の人たちを見ていた。
たまたま訪れたあのバーで。
夜のようなドレスを身に纏い、彼女は高らかに歌った。
あの日の彼女は、歌姫だった。観客たちを歌で跪かせた。
彼女はヌーヴォでコーヒーを飲みながら「才能がない」と嘆いていたことがある。いや、しかし、そんなことはなかった。
灰色の青春が、微かに色づいた気さえしたのだから。
同時に、自分は日陰者だ、という事実も突きつけられた。
は表舞台に立つべき人だ。それをまざまざと思い知らされた。
きっといつか、彼女に迷惑がかかる。自分は世間からの風当たりが強い、フレア団にいた男。自分を好いていると知られたら、彼女まで同じ目で見られてしまう。
(だから、突き放そう。店員と客でいよう。この先その線引きを誤ることはない)
そう決心した矢先、グリは男に言い寄られるの姿を見た。
その瞬間――グリの心は燃え上がった。
くべるものさえなかったはずだ。
灰しかなかったはずだ。
身を焦がすような衝動のままに、の方へ近付いて。
今度はバーテンダーの男と仲よく談笑するに話しかけたのだ。
「……コーヒーですよね」
そこから我に返って、を突き放そうとしたのだが――結局、中途半端な突き放し方になったのは、反省しなければいけない。