不死鳥のごとく、燃え上がれ⑭

 初めて告白された日のことを、グリは何度も思い返す。
 アルバムをめくって懐かしむように。
 気の迷いだったんだと、相手の笑い話にできるように。


***


「グリさんが好きです!」

 彼女はいつも青を纏い、目が焼けてしまうほどの笑顔を浮かべ、グリに愛を伝える。

(おれなんか・・・に、やめてくれ)

 そのたびに、グリは心臓に焼けた棒を押しつけられたような気持ちになる。

(おれが元フレア団だと知ったら、きみは失望するはずです)

 フレア団。この名前が出るたびに、グリは過去に引き戻される。切り離せない、過去に。



 5年前のカロス地方には、フラダリという男が率いる組織「フレア団」が存在していた。

 争いのない美しい世界を取り戻す――。

 そのために、フレア団以外の人間とポケモンを消し去ろう。
 3000年前、戦争を終わらせたという「最終兵器」の力で。

 だが、計画は失敗に終わり、フラダリは行方不明に。フレア団も解散となった。

 あとに残ったのは、世間からの冷たい目。

 親がフレア団の団員だった。それだけで、子どもたちは常に逆風に晒されてきた。

 時折、グリは思うのだ。
 子どもにとって、親は世界だ。
 それが正しさだと教えられて生きてきたのに、突然、“正義”を味方につけた者が現れた。その世界は間違いだったと壊された。

 突きつけられた現実。
 目を覚ました時の絶望感。
 全てが無に帰した虚無感。
 そして、爪弾きにされた喪失感。

(おれたちがしてきたことは、一体何だったんだろう)

 瞬きほどの青春時代を、フレア団の準構成員として捧げてきた。
 あの御方の思想に賛同し、情熱の限りを燃やして、燃やして、燃やし尽くして。

 最後に残ったのは、何なのだ。

 世間一般の子どもが甘受すべきものはなく、青い春は赤い炎に焼かれ、打ち捨てられたのは灰色の――。


***


「……、来なくなったな」

 キッチンカーの中にいたグリは、ギクリと身体を強張らせた。
 グリーズが半眼でグリを睨んでいる。

「立地で勝負しているここに、足繁く通ってる健気な奴だったのに……。おまえ目当ての珍しい、普通の女の子・・・・・・

 どこか含みのある言い回しに、グリは眉根を寄せた。

「仕事中ですよ」
「なんだよ、今更。混みそうにないからいいだろ」

 客足はいつもより落ち着いており、カフェヌーヴォでコーヒーを飲んでいる客は2組だけだ。

「適当に返事してやればよかったのに。売上が減った」
「グリーズが寂しいだけでは。会いたいんでしょう?」
「……」

 返事はなかった。少し身を乗り出すと、不機嫌な目つきのグリーズが見えた。