不死鳥のごとく、燃え上がれ⑤
(どうして私って言語化が下手なのかしら……)
時折言葉に詰まりながらも、はデウロに自身の風船について説明した。
「グリさんがいることが、幸せなの。彼を見ると、私の中の風船は膨らんでいく」
上手く説明できないので、これはデウロに言うつもりはないのだが……にはもう2つ、グリに「好き」と伝えた理由がある。
は、彼の優しさで救われた。彼がいるだけで世界が色づく。世界に寛容になれる。
(なのに、グリさんって、自分のことをおれなんかって言う時がある)
その台詞を聞くたびに、冷めたコーヒーを飲んだ時の侘しさが胸に迫ってくるのだ。
彼が分け与えてくれたのに、どうして彼自身は、それを持っていないのだろう。
だから、彼に分け与えたいのだ。が持つものを。それが、ひとつ目の理由。
そして、2つ目の理由は――。
「?」
デウロに呼ばれ、は素早く姿勢を正した。脳内に蘇った、あの人の残像を振り払う。
(いけない、ボーっとしてた)
目の前の友人が心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「ごめん、なんだっけ」
「もおー。だから、の心の風船の話。ちょっとやっぱりあたしには全部分かってあげられないんだけど」
ここでデウロは言葉を切った。の目をしっかり見て。
「……歌えば、いいんじゃないかな」
は瞬きを何度も繰り返す。
「う、た……」
「うん! ほら、ってスカラシップ制度を使ってミアレシティに来たでしょ。あたしと一緒で」
「そうだね。舞台歌手になりたい!」
「あたしはプロダンサー。ほら、あたしたち、どっちかっていうと身体を使って伝えることが得意じゃない?」
デウロは一拍置いて、を真っすぐ見る。
「だったら……、無理して『好き』に閉じ込めなくてよくない?」
表現者なんだし、と彼女は言う。
「嬉しいことや悲しいことは、昇華、いや、表現したらいいんじゃないの」
空から射し込む光に照らされたデウロを、は静かに見つめていた。
「……ええと、デウロは、心の中にある風船が破裂しそうになったら、踊って空気を抜くってこと?」
「うーん。の風船のことがよく分からないからなんとも言えないんだけど。胸の奥からガーって来た時は、そうかも」
なるほど、とは呟く。
全てではないけれど、理解はできる。歌うのは、いいアイディアのような気がした。
(表現、表現かあ……。最近同じようなことを誰かが言っていたような)
コーヒーカップに手を伸ばしかけて、あ、とは声を上げた。
「どうしたの?」
「あー。そういえば、デウロと似たようなことを、先生が言っていたような気がして……」
が師事している講師が、レッスンの終わり、アドバイスをしてくれたのだ。
――役になりきることは大事ですが、あなたが心に抱える熱情を、歌に乗せて表現しましょう。そうすれば、もっとあなたの歌は輝きます。