不死鳥のごとく、燃え上がれ③
から愛の告白を受け、グリは困ったように眉を八の字にした。
「……またですか」
「はい、またです! 好きです!」
「しかし、おれは――」
「ええ、分かっています」
は慌ててグリの言葉を遮る。
「大丈夫です! 答えは分かって、いますから。最初に告白したあの日と同じだと」
では、どうして毎日告白を――。
そう言いたそうな表情で、グリはを見つめている。
「じゃあ何で毎日『好きです』って告るんだよ……」
グリの方は心に留めておけなかったらしい。は「えへへ」と頬を掻いた。
「……思ったことは素直に吐き出さないと、私の中で風船が爆発しちゃうからです」
「風船?」と、グリーズが眉を顰める。
「なんだよ、風船って」
「私の心の中には、 好きでパンパンに膨らんでいる風船があるんです」
「からかってんのか……?」
「まさか! 海が綺麗だとか、星が好きだとか、それと同じで……。グリさんを見ると、それがいっぱいになるんです」
グリは理解できないとばかりに頭を振った。
「……あのさあ。あんたが毎度好き好き言ったって、グリは――」
「『ひのこロースト』ができましたよ」
まるで、この話は終わりだとばかりに、グリがキッチンカーのカウンターにコーヒーカップを置いた。
テイクアウトでよく見かけるプラスチックのそれは、赤地に小さな三角形が散りばめられている。どんな時でもヌーヴォカフェのロゴがお客さんに見えるように置くあたり、プロだなあ、とは思った。
「それから、注文はクロワッサンでしょう。グリーズ、さんを案内がてら、こちらを運んでください」
「……はいはい」
グリーズは肩を竦め、コーヒーとクロワッサンをトレンチに置いた。
「さん」
「はっ、はい!」
名前を呼ばれただけで頬を赤らめるへ、グリは諭すような口調で語りかける。
「きみの気持ちは理解しているつもりです」
「……じゃあ!」
「けれど、応えることはできません。きみは学生なんですから、もっとこれから先、素敵な出会いがありますよ」
やんわりと、しかし突き放すような言い方。
これは拒絶だ、とはすぐに理解した。
「ごめんなさい。グリさんを、……いえ、ヌーヴォカフェのお2人を、困らせるつもりはなくて……」
でも、好きなんです、とは小さく呟いた。
(コーヒーを出してくれたあの日から、ずっと)
けれど、二度目のお断りの返事だ。
(好きだと伝えるのも、潮時なのかもしれないな)
「ごめんなさい」ともう一度謝って、は席に着いた。
「チルチルっ」
ふと、自分のチルットの鳴き声が聞こえてきた。辺りを見回せば、キッチンカーの横でリザードンとお喋りしているチルットがいる。
(楽しそう。そっちは上手くいっていいな)
なんだか見ていられなくなって、は手元へ視線を戻し、コーヒーを啜った。
口に広がる苦味と酸味。軽やかな飲み心地ではあったが……。
(今日はちょっとだけ苦いな……)