不死鳥のごとく、燃え上がれ①
コーヒーを飲むたび、の頭の中には、いつもあの人の穏やかな顔が思い浮かぶ。
「どうぞ。お代は結構ですから」
数ヶ月前、夢の第一歩を踏み出すべくミアレシティで暮らし始めたの心の中には、どす黒いものが渦巻いていた。
(これが、気付かないようにしていた現実なのかな)
自分より才能に溢れ、努力を厭わない者がいる。
そもそも、家庭環境に恵まれている者がいる。
ルームメイトは恋人を連れ込んでいるはずだ。あの部屋にはまだ、戻れない。
家にも街にも居場所がない。
奨学生(ブルシエ)の身であるから、カフェで無駄遣いもできない。
重苦しい足を引きずって、石畳を歩いていく。
歴史ある石造りの街並みの中心に、プリズムタワーがそびえ立っている。近未来を思わせる塔は、まるでミアレシティの主のように巨大で、小さなを嘲笑うかのように見下ろしていた。
(どこにも私の居場所なんてないんだ)
そう思った瞬間、タワーが涙でぼやけて見えた。
(ああ、帰りたいなあ)
けれども、どこへ帰ればいいのだろ
途方に暮れるに声をかけてくれたのは――。
「ここは、きみのような方のためにあるのです」
マスターの心遣いと温かなコーヒーだった。
の心に、小さな希望の灯りがともる。
(私の恋って、コーヒーみたいな味なのかも……)
いつも角砂糖を3個入れるところだが、今回は1個で十分だった。