揺れに気付いて目が覚めた。
まず真っ先に目に飛び込んできたのは、ウォロの背中だった。
ああ……。私、おんぶされてるのか。
「――ウォロ先パイ」
「おや、目覚めたんですか」
「どこに向かってるんですか」
やや間があって、
「さあ、どこに行きましょうか」
自虐とも嘲笑とも取れる返事に私は困惑した。
おかしい。恐らく、もう原作の流れは終わったはずだ。
私は原作の流れを変えられなかった。
しかも「ウォロショウ」にすらできなかった。
私は失敗した。原作ゲームの知識があったのに、何も変えられなかった。
せめて、主人公であるショウちゃんが悲しむ結末にはしたくなかったのにな……。
というか、
「先パイ」
「あんなことをしたのに、本当のワタクシを知っているのに、まだ先パイと呼んでくれるのですね」
「いや、まあ、はい?」
「商会を抜けたのに?」
「え、そうなんですか。……でもこの呼び方抜けないんで、しばらくこのままで」
ん? でもイチョウ商会を抜けたっていうことは? こうして私をおぶってということは?
「もしかして、私も抜けたことになってます?」
「はい」
「うーわ、やりやがったな先パイこの野郎。仕事……金……くそう」
「まあいいじゃないですか。これからのことはアナタとワタクシで考えていきましょう」
それはつまり、
「ウォロ先パイ、私と一緒に生きてくおつもりで?」
「はい」
「……拒否権とかは」
「ないです」
「うわあ……」
空を見上げれば、そこには満点の星と上弦の月。
満月は、まだまだ先だ。
「何年、何十年、何百年かかっても……。ワタクシの隣にいてくれるでしょう、アナタは」
いや、
「そうでなければ、許さない」
負ぶさっているので、ウォロがどんな顔をしているのかは分からない。
だが、きっとあの日見せてくれた、とんでもない感情が入り混じった表情をしているに違いない。
「はあ……。どうしてこんなことに……」
私が取った行動は間違いだったのかもしれない。
一体、何がダメだったのだろう。
ああ、アルセウスよ。あんたが存在しているのは知っているんだ。
ショウちゃんだけでなく、転生者である私の前にも現れてくれないか。
ウォロがどうして私を連れ去っているのか。
その顛末を語ってみせるからさ。
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